
20代のころ、アロマに魅せられた私は、漠然とした夢を胸に描いていました。
花やハーブを育て、収穫した植物から精油が採れる蒸留所のある農園を営みたい。
自然農や植物の知識もまだまだ浅く、ただ植物の香りを抽出してみたいという純粋な憧れが先行する、青い夢でした。
あれから月日が経ち、自然とともに生きる時間のなかで、学び、気づかされてきた今、確かに思うことは。人は自然の外側で生きているのではなく、自然に生かされている存在だということ。
風や雨、土や微生物、虫や植物。目には見えない無数の循環と共に、私たちの暮らしは成り立っています。だからこそ自然に対して畏敬の念を持ち、共生し、深く関わり続けていくことが、本当の意味でナチュラルコスメづくりにつながっていくのだと思うようになりました。
鹿児島県南大隅町。
鹿児島空港から車で2時間。九州の最南端へ向かって南下するにつれ、窓の外の景色が少しずつ変わっていきます。日本らしい常緑樹の森がいつの間にか姿を変え、ビロウや椰子など、南の島の植物たちが現れはじめるころ、「くるひ自然植物園」のある地が見えてきます。
私たちはKruhiを進めるなかで、ある原点に立ち返るようになりました。ナチュラルコスメの原料は、工場で生まれる粉や液体ではなく、その源を辿れば、すべて植物から生まれている。そう実感したとき、「納得できるプロダクトは、納得できる土から育った植物からしか生まれない」という考えに辿り着きました。
肌に触れるものだからこそ、原料の一粒、一滴にまで安心と健康を宿したい。その想いが、『農』という新たな挑戦へと私たちを導いてくれました。
2024年、春。
Kruhiのバームの原料でもあるハイビスカスローゼルを、鹿児島県南大隅町で無農薬・無化学肥料栽培している農家・肥後十蔵さんとともに、農業生産法人「アーセンキッチン株式会社」を設立しました。
"Earthen Kitchen"
日本語にすると「土の台所」。
土という場所で、微生物や植物、動物、人が関わり合いながら、いのちが循環していく。その循環の中心にある"土の営み"を、私たちは台所のような場所だと感じています。目に見えない微生物たちが働き、植物が育ち、人の身体や心を支え、また土へ還っていく。アーセンキッチンという名前には、そんな「土が生み出す循環の台所」という意味を込めました。
次回は、肥後さんの畑で出会った言葉と、20代の夢がついに形になった場所のことを、お話しします。
Text by Arata Iura

