辺塚だいだいの花摘み

鹿児島県南大隅町・佐多辺塚。
本土最南端のこの地に、ひっそりと息づく柑橘「辺塚だいだい」があります。
4月の辺塚には、春の訪れを知らせるように、どこからともなくやわらかな香りが漂います。

山に入ると、白く小さな花が静かに咲き、風に乗って甘く繊細な香りを運んできます。
この花が、「ネロリ」と呼ばれる香りのもと。
花は一つひとつ、人の手で摘み取られます。
そのため収穫できる量はごくわずか。
ネロリの精油が希少で高価とされるのは、こうした背景があるため。


そして、花を摘むということは、秋に実る果実を減らすことでもあります。
どの木から、どれだけ摘むのか。
その判断もまた、人の経験と感覚に委ねられています。

4月末、Kruhiは南大隅町観光協会とともに、「辺塚だいだいの花摘み」を開催しました。
2日間で摘み取られた花は、昨年の倍近い18kg。


南大隅高校・根占中学校の生徒や教職員の皆さま、鹿屋市の保育園の子どもたちと先生方、辺塚の地を守る地域の皆さま、鹿児島大学の学生さんや地域おこし協力隊の方々、そしてKruhiをご愛用くださっている鹿児島の皆さまとともに、辺塚の山で花を摘む時間を分かち合いました。
普段は静かな山に、笑い声と足音が重なり、にぎやかであたたかな時間が流れていました。

人が訪れ、人の手が入ることで、山の空気が少しずつ動き出していく。
まるで山そのものが、喜んでいるような感覚がありました。


静かな山がにぎわいを取り戻していく光景に、この土地が本来持っている力を感じました。
南大隅町に暮らす方にとっても訪れる機会の少ないこの場所で、新たな縁やつながりが生まれる瞬間に立ち会えたことを、うれしく思いました。


人が関わることで木々が応え、また次の季節へとつながっていく。
昨年の花摘みを経た木々が、今年も新たに芽吹いていたことにも、自然を損なうのではなく、再生へとつながる循環を見ることができました。

辺塚だいだいの木々は、地域の高齢化により手入れが行き届かず、山に残されたままのものも少なくありません。
収穫されない果実は地面に落ち、分解の過程でメタンガスが発生することもあり、里山環境への影響も懸念されています。
また、食べごろを迎えた果実を猿などの野生動物が口にすることで、獣害につながる側面もあります。
摘花という行為によって木に再び人の手を入れ、光と風を通し、次の季節へとつないでいく。
それは単に「守る」ということではなく、関わり続けることで、その存在を未来へ手渡していく営みなのだと感じています。

プロダクトをつくることで自然を損なうのではなく、未来の再生へとつながっていくような関わり方。
この静かな循環の中に、Kruhiが大切にしたい「リジェネラティブビューティー」のあり方を見出しています。

摘み取られた花は、翌日蒸留され、ネロリウォーターへ。
この後数か月の時間を経て、プロダクトとして生まれ変わります。
これまで活用されることのなかった花の恵み。
知恵を出し合いながらプロダクトへと昇華していきます。

土地に流れる時間。
人の手。
自然の循環。
季節の山の香り。

すべてを一本のプロダクトに詰め込んで、機能性と併せて化粧品として日常へ届けていく。

これは、Kruhiをつくる中で、私たちが何よりワクワクすることのひとつです。
ひとりやふたりでは叶えられないことも、たくさんの手が重なることで、大きな一歩へと育つ。

Kruhiはこれからも、肌・髪・土・地域・未来をひとつの循環として捉えながら、リジェネラティブビューティーを育んでいきます。

辺塚だいだいの花摘みで収穫したネロリを活用した新たなプロダクトの誕生も、
どうぞご期待ください。

Text by Ai Iura

掲載している写真は、すべて本人の許可を得た上で使用しております。